○回向院大相撲
・昨日四日目の回向院大相撲は前日来引続きたる大景気にてありし。
・高浪に音羽山は、左四ツにつがいて高無二無三に攻め来るを、音も聞こえし剛のものなればヨリ返しながら投を打ちしも腰砕けて高浪の勝。
・立嵐に大泉はいづれも活発なれば目覚ましき勝負こそあらんと満場の視線は両力士の一身に集まり、立合い如何と待ち構え居るうち早くも立上り互いに突合い、立は鋭く付け入りて片無双となしをカッパヂキて大泉の勝は当然。
・大纒に今泉は、左四ツ纒はヨリ切らんと挑みたるを今は体を開いてこれを防ぎ、かえって敵の前袋を探り釣り出さんとの考えなれども、纒も敵の構えを知るものから腰を切りてこれを防ぎ互いに挑み合い、水入りてのち今はようやくに敵の前袋を取りイデヤ釣り出さんと土俵間際にヨリ行く時、引分となりしは今の残念に引替え纒は僥倖との評あり。
・鞆ノ平に出羽ノ海は、右四ツとなりて互いに投の打合い、最後に鞆は下手投を打ちしも敵の足クセにて同体流れて預り。
・鬼鹿毛に朝汐は、左四ツ鬼は得意の襷となり朝差し手を引いて挑みし時、鬼は早くも足クセにて攻めヨレば朝も大事と防ぐトタン巻き落して団扇は鬼に上りしも、同体流れて預りとはなりぬ。
・大戸平と大蛇潟は、大蛇例の如く容易に立上らざるより大戸は憤然として満面に朱を注ぎイデヤ立上らば一掴みに取り挫ぎくれんとの意気込みなれば、ようやくに立上ると等しく大戸は勢い烈しく左差しとなり遂にヨリて大戸の勝と思いしに、大蛇は土俵を踏切りたるのちウッチャリしとて苦情起り預りとなりしが、星は大戸平の方へ付す事になしたり。（ソレハ当然サ）
・知恵ノ矢に高ノ戸は、立上り知左を差さんと付入りしを、その手を取りて一寸と引廻しトッタリで高の勝は絶妙。
・響矢に大達は、左四ツ踏切りありて響矢の勝は仕合せ。
・大炮に達ノ矢は、大炮本年一月の場所にて敗を取りしゆえ今日の立合も底気味悪く、殊に前日朝汐に取挫かれ居れば何となく悄然として見えたり、さて両力士は念入りて立上り手車となりて互いに睨みううち、達はその手をエイと引払う声と共に早く二本差しとなりて攻立つれば、大炮も此所ぞ大事とヨリ返しつつ敵の差し手を絞らんとする時遅く彼の時早く、体を逃げながら巻き落して達ノ矢の勝は満場喝釆。
・谷ノ音に千年川は、右四ツ挑合い水入りのち下手ヒネリで谷ノ音の勝。
・平ノ戸に小錦は、突出して小錦の勝。
・西ノ海に司天龍は、司天立上りざま右手を敵の首に巻き足クセにて巻き倒したるが、同体落ちて預となり打出したり。
新入幕の大蛇潟ですが立ち合いはかなり汚いようです（；・ω・）大戸平もイラついたようで白星を取り逃がしてしまいました。星は大戸平との事なので、番付編成や給金計算上では白星として扱われます。記者の何気ない一言コメントがいいですね。達ノ矢は巧い相撲でまた大炮に勝利。西ノ海は奇襲を喰らって白星を取り損ねてしまいました。
明治２５年夏場所星取表
西小結・谷ノ音喜市