○回向院大相撲
・一昨十五日は引続き早天よりの好天気にて、賽日の外に日曜なれば府下各所の物見場は中々に景気よく、相撲もまた十日目なるにも拘わらず近来稀なる上景気にて、徳川公爵は従者数名を随え午前より来場し居たり。
・北海に谷ノ音は右四ツにてつがい、引落して谷の勝。
・今泉に八幡川は、左四ツにて競ううち八幡は幕下中屈指の巧者ものなれば揉合ううち下手投げ或いはワクなどを試みしが、如何にせん敵が流石に今泉なれば容易は極らず立合ながら水入り、のち始終は八幡より仕掛けしが取疲れ引分は充分。
・勢力に繋島は、左差し押し切りて勢力の勝。
・平石に剣島は、右差しスクイ投げにて平石の勝。
・総州山に獅子ヶ嶽は、突出して総州の勝。
・黒縅に大則戸は、立上り則戸は左を預け右にて敵の前袋を取り押行くを、黒は上より絞り極め付けんとするも、則戸は押行くうちアワヨクバヅブネリか捲落さんとせしが、敵もこれを稍々悟りしものなるか始終注意して防ぎしより極らずして水入り、のち揉合いしが引分。
・吉ノ山に唐辛は、右四ツ上手投にて吉の勝。
・藤ノ戸に阪田野は、左四ツ上手投にて藤の勝。
・梅山に石部川は、梅は無残に押し行くとき土俵際にてウッチャリ同体流れ物言い付て預り。
・楯甲に東山は、左四ツ押し切りて楯の勝。
・若ノ川に白梅は、左四ツ水入り後揉合いて引分。
・京ノ里に播磨灘は、右四ツ逆ヒネリにて京の勝。
・小錦に諏訪ノ海は、左四ツヨリ切りて小錦の勝なれば此の日の大関弓取りは小錦にて、弓取は桂川が勤め全く回向院の大相撲を結び了りたり、毎年回向院本場所となると雨天等のため延びがちにて、十日の相撲が二ヶ月にも渡ることありしが、本年は十日が十日晴天にて打ち続きしは珍しき事と云うべし。
○相撲旅稼ぎ
・かねて黄疸病にかかりて治療中なりし大達は最早全快せしにつき、大阪の熊ヶ嶽嵐山等の一行と共に昨日より横濱にて興行する由。
・西京の小柳一ノ矢は明後十八日神戸より汽船にて上京するという。
・大達の一行は横濱を終れば伊勢原及び小田原にて興行する筈なりと。
・剣山一ノ矢大鳴門西ノ海の一行は昨日横須賀へ赴く筈なりしが、同所の大火に付き一両日見合せたりと。
千秋楽はいつも通りの幕下相撲ですが、未来の幕内・三役力士の名もいくつか見られます。播磨灘なんていう力士もいますが、横綱にはなれず十両止まりでした。弓取りは今場所も結びの勝ち力士本人ではなく代理人。巡業情報の中に一ノ矢上京と書いてありますが、東京相撲の一ノ矢とは別人で京都相撲の強豪、翌場所東京相撲に加入して達ノ矢と改名します。
明治21年春場所星取表
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こんにちは。質問です。ニュースのところ。
「同所の大火に付き」これの意味はなんでしょうか?部屋で火事がおこったのでしょうか?
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ドモ(・ω・)ノ
同所とは横須賀のことでしょうね。
現地で大火事が発生して相撲どころではないらしいので行くのを延期したということでしょう。