○回向院大相撲
・一月早々興行する筈なりし同場所も、力士中の紛紜ゆえ久しく延引しようやくの事にて昨日初日とはなりぬ、当日の景気は初日にしてはまづ宜しき方にて、毎年の常客安藤元老院議官は例年通り来り居られたり。
・鬼ヶ谷に伊勢ノ海は、いづれも烈しく突合いながら左四ツとなり、伊勢差し手を働かさんとせしも挟み付けながらよりて鬼の勝。
・綾浪に響矢は、綾浪の不元気に引換え響矢は勇ましき面色にて立上り、左四ツ苦なく釣出して響の勝は末頼もしき事に思わる。
・芳ノ山に海山は、立合いざま右四ツにつがい互いに投の打ち合いを為し、最後に芳は今度こそ極めんものと腰を入れ金剛力を出して下手投に行きしが、余りハヅンだせいか体が少し浮きたるを、敵は得たりとモタレ込んで海山の勝は、何んと云ッても力士の貫目はまだまだ充分あります。
・鬼鹿毛に嵐山は、一寸と左四ツにつがいしが鬼は例の合掌でも掛ける心得なりしか、右を敵の首に掛けしも意の如くならざれば足クセ巻かんとせしに、解れて嵐泉川となりて攻めヨラんとアセリしも、あわれ折角掛けたる術の解けんとしたれば此処ぞと体を引きながら力に任せ引落したるが、鬼の体の倒るると同時に踏切りありて物言付き預り。
・常陸山に千年川は、丁寧に仕切りて立上り常陸は遮二無二右を突張り行くと敵が堪えたる時、土俵際まで逃げながら引落せしが、敵も落ちながら素早く付け入り右差しとなりしにぞ、常陸は最早これ迄と捨身になりし時、ヨリて千年の勝。
・西ノ海に知恵ノ矢は、立合に知恵は蛸の如く敵の首に巻付き足クセに引きしが、恰も大木に蝉という気色にて難なく持出し西の勝は滑稽とやいわん。
・大鳴門に黒雲は、突合いながら黒が一生懸命にハタキたる時は鳴門の体稍々危うく見えしが、流石同力士の事なれば立て直して再び突合い左差しヨリて鳴門の勝は是非もなし。
・平ノ戸に大纒は、右差し小手投にて平の勝。
・阿武松に千羽ヶ嶽は、立合いて千羽はお株の右を引張り、泉川となりヨリ行きし時は必定千羽関の勝ならんと思いきや、首投にて阿武の勝は満場大受け。
・司天龍に響升は、右四ツヨリて響升の勝は勉強の程あっぱれあっぱれ。
・真鶴に若湊は、立上りて突張り合い若は締めながら攻め来りしが敵は体をかわしながらこれを防ぎ、左四ツにつがい下手投げにて真鶴の勝。
・八幡山に若ノ川は、立合若引掛けしが残り左四ツ釣出して八幡の勝は嬉しかッタと云う芸妓連を見受けたり。
・小錦に谷ノ音は、突張りて錦の勝。
・鞆ノ平に今泉は、左四ツにて揉合ううち鞆首投げに行きしが残り、押出して今泉の勝。
・一ノ矢に伊勢ノ濱は、立上り伊勢は左差しにて敵を土俵際まで押し付けたれば、一も此処ぞと右手を敵の首に巻きヒネらんとせし時、伊勢鋭く攻め来りしかば遂に同体流れ預りとなりしに、満場の人々は伊勢の勝なりとて一時にどよめき土俵の廻りに立ち塞がりし程の大騒動なりしが、先づ預りが穏当ならんと思わる。
大達は小結に降格されましたが体調戻らず、またしても休場となりました。代わって新大関は先場所好成績の一ノ矢、ですが初日は硬くなったかそれ程でもない相手に苦い大関デビューとなりました。花形力士の司天竜は何と新十両の響升(ひびきます)に完敗、小結鞆ノ平も十両の今泉に黒星と、東西制ならではの顔合わせで波乱がありました。
明治22年春場所星取表
西大関・一ノ矢藤太郎
SECRET: 0
PASS: be83e113aeeec3717846a8131ae8370e
こんばんは。
昔のお相撲さんの顔写真はとても興味を引き付けられます。変な質問ですが、後ろから撮った画像などはありますか?どんな具合に大銀杏が結われていたのか、とても興味があるのです。きっと今とさほど変わらないと想像しますが、見てみたいな、と。もしお持ちでしたら、いつの日かお願いします。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
ドモ(・ω・)ノ
この時代のものは手元には無いと思います・・明治後半の梅ヶ谷・常陸山・太刀山あたりならあるのでいずれ出したいと思います。