○大相撲三日日(昨五日)は朝から雪を催し折々ちらつきて寒気も非常に強かりしかば如何と思いし見物も割合に入りがありて、且つ相変わらず徳川近衛の両公その他の貴顕にも多く来観されしが、午後よりは本降りとなりたるに入掛もやと気遣いしところ首尾よく取り切り一同大満足なりしと。
・越ヶ嶽に小天龍は、烈しく突合い突き出し越ヶ嶽の勝。
・玉龍に天津風は、双方暴れ廻り揉み合ううちトッタリにて見事玉龍の勝。
・海山に大纒は、烈しく突き合い海は首投を試みし時、纒はイヤダと首を縮めたので海の手がスッポ抜け腰を突き大纒の勝は面白かりし。
・外ノ海に司天龍は、突き合い司天右をさし押切って司天龍の勝。
・千年川に小松山は、突き合ッて左四ツとなり揉み合い土俵際にて千年棄て身を打ち、同体に流れ団扇は千年に上りしも物言い付き預り。
・若湊に谷ノ音は、右四ツに渡り揉み合ううち合四ツになり、間もなく谷得意の足クセにて巻き倒し谷ノ音の勝。
・小錦に鬼ヶ谷は、立ち上るや突き出して錦の勝。
・西ノ海に高浪は、高右さしにて押し行くを泉川にて撓め掬い投げて西ノ海の勝。
・(中入後)響矢に知恵ノ矢は、突き合いて二本ざしとなり釣り出して響矢の勝。
・大蛇潟に一力は、一力が右筈を大蛇は左手に巻きつつ防ぎ揉み合ううち水となり、再びつがい挑み合い力は小手投を数回試みたれど大蛇は必死と防ぎ、勝負に果てしなく引分。
・大達に大戸崎は、大戸の左筈を達は巻きて揉み合い大戸は寄らんとし達は下手投げに行きしも極まらず大相撲となりしが、勝負に果てしなく取り疲れて水となり、再びつがい挑み合い引分となりしは力の入りし相撲なりし。
・北海に大泉は、左ざしにて寄り切り北海の勝。
・響升に御用木は、響の左ざしを用は泉川にて撓め防ぎしも下手投げにて響升の勝。
・鳳凰に大碇は、一寸左四ツになりしが突放し碇は得意の右ざしに行かんとするを、鳳はハタキ碇が危うく残せしをすかさずハタキ込んで鳳凰の勝。
・朝汐に出羽ノ海は、朝の二本ざしを出羽は閂にて絞りつつ寄り倒し出羽の勝は案外。
・高ノ戸に大砲は、立ち上るや突落して高ノ戸の勝。
○大戸平欠勤の理由
・西の大関大戸平が今度の大相撲に出勤せぬはどういう訳かと尋ねるに、同人は昨年の五月場所に小錦に敗を取りしより、この次こそは勝ちを制せんとの志をいだき昨年中より身体を養い稽古にも念を入れていたりしに、図らずも石痳病にとりつかれ男根を切りさきて身体疲労に及びたれば、大相撲へ出勤などは思いも寄らず、されども本人は勇気昔日に異ならず御贔屓の方々に対しても出勤せねばならぬと言いしかど、師匠尾車はイヤイヤさにあらず生中病気中の身をおして負越しにでもなる時はかえって日頃の贔屓に背くならん、とて堅く出勤を止めしかば、大戸平も遂にその意に従いしものなりとか。
雪の中の開催となりました。今とは違い屋外ですから、力士たちは寒そうですね(;・ω・)西方は期待の大碇と大砲が2敗目を喫する中、先場所好成績を残し初めて上位に躍進した大纒(おおまとい)が3連勝と気を吐いています。大達は今場所よく動けていますが3日連続引き分け。朝汐はどうしたわけかベテラン出羽ノ海に完敗してしまいました。
明治27年春場所星取表