○土俵のかずかず
・勝平と両國は、勝が飛び違いに仕掛け行くを両危うく残して巻きにかかり、今度は勝より投げに行く途端両は寄りながらもたれ込み双方同体に流れて預かりとなりしも、星は両が占め満場破るるばかりの大喝采。
・若島と大戸平は、大戸が前日の故に堅くなりしに引替え若は血気の人気相撲、ぶつかり放題ぶつかるので最初より取組おもしろく大戸は泉川を極めて撓め出さんとしたれど、若は引外して左筈に押行き東溜りへ押出したるは天晴由々しき大手柄、見物いづれも我を忘れて投げ物をなし、その数積んで山を成しぬ。
・欠勤中の西ノ海は去る十八日の朝、幕内力士の稽古をしているうち如何したはづみか右の二の腕を逆に引かれ目下なお治療中なれば今度の相撲には如何しても出られぬという、響升は田舎で安物買いをしたものと見え、例の醜病に脚部を痛め昨今煩悶中なりといえばこれも先づ出勤は覚束なし、西の方士鬼鹿毛は開場前の紛議に大戸平の股肱として働き、余り酒を飲過ぎたのて身体弱り欠勤中なりしが、師の雷に叱られたので是非なく昨日より出勤。
勝平は十両力士ですがスピードのある小兵の業師、この日も見ごたえのある相撲でした。しかしながら星取表を見ると対戦相手は不知火となっており、両國というのは何かの間違いでしょうか?大戸平は2日続けて新入幕力士に黒星、大関としては非常に珍しい記録ではないでしょうか。若嶋への祝儀の纒頭が飛び交いました。現在なら座布団が舞っていたことでしょう。西ノ海は今回の騒動の発端ともなっているので遠慮して休んでいるのかと思いましたが実際に負傷しているようです。鬼鹿毛は酒の飲み過ぎで休場中(;・ω・)初代梅ヶ谷の雷親方に叱られたのでは出るしかありません。
明治29年春場所星取表