○回向院大相撲
・一昨日(十日目)は強風及び千秋楽のため観客少なかりしが、好角家は例によって多かりし。
・宮ノ浦に祇園山は、突き合いしのちハタキ込んで宮の勝。
・栄嶽に北國は、右相四ツにて釣り合いもたれ掛て栄の勝。
・松ノ風に雷ノ音は当日の好取組にて、雷の飛び付きを松は左差しにて受け、雷は右四ツより左四ツとなり松が下手投を打てば雷は襷に反りを打つも極まらず、また相四ツとなり遂に松が釣ってもたれ込みたり。
・鶴ヶ濱に鉞りは、鉞の右差しを鶴が泉川にて持出したり。
・岩戸川に淡路洋は、突合てのち淡路が左筈にて押すを岩戸は撓めつつ上手投を打ち、次いで矢筈に仕替えて迫るを、淡は引き外して飛び廻り自ら土俵外へ足を踏出しぬ。
・御舟潟に雷山は、御舟の左筈にて暫し競り合い雷が引落すか捻るかせんと窺うも御舟は逃げ構えにてこれを防ぎながら足を取らんと狙ううち、雷は落すと見せて突出したり。
・中入後、甲に高見山は、甲の左差しは苦もなく泉川にて撓め出し高の勝。
・勝平に八剣は、剣が左差しにて勝の右を防ぎしが遂に勝は左差しの内掛にて倒し団扇は勝に上りしが、同体に流れしと物言い付き預りとなる。
・(是より三役)笹島に黒岩は、右相四ツにて笹の左筈を黒が巻投げの打合いより黒は首投を打ちしも極まらず、遂に笹が下手投にて勝を占めたり。
・稲瀬川に熊ヶ嶽は、直ぐに突合いの大相撲となり稲瀬の左筈を熊は右巻きの左筈にて挑みしが、稲瀬の振り出しにて熊の負となりぬ。
・梅ノ谷に岩木野は、好相撲にて岩の左筈を梅は右にて寄倒し梅の勝にて目出たく千秋楽。
千秋楽、十両の有望力士が次々と登場しますが高見山が幕下ホープの甲(かぶと)を下して8勝目、十両では最優秀の成績です。ここまで土付かずで来ていた黒岩(くろいわ)は投げ負けて初黒星。しかし新入幕有力となる好成績です。十両の業師・勝平は今場所好調で5点の勝ち越し。前半苦しんだ梅ノ谷は7勝目で怪童の面目を施しました。新入幕で大活躍した荒岩らと共に新時代を築いていく幕開けとなる場所でした。
明治30年春場所星取表
新聞掲載の十両星取表