○回向院大相撲
・昨二十三日(八日目)は欠勤力士のありしにも拘わらず大入にてありし。
・朝日龍に國見山は幕下有望の力士にて、朝が矢筈にて攻むれば國は引き外し左差しにて釣り出し、國の勝。
・今錦に小武蔵は襷反りにて小の勝は喝采を得たり。
・境嶽に達ノ里、達は境の突きに一寸ひるみしが立て直し、寄って下手投にて達の勝は中々強し。
・淡路洋に岩ノ森は、烈しく突き合い淡路は岩のハタキを危うく残し、すぐ付け入り左筈にて押切りて淡の勝は御苦労。
・尼ヶ崎に八剣は、八出鼻を張りたるも尼は飛び入り外無双にて渡し込まんとせしに、八は逃げ身となりて左を差し掬って八の勝。
・鬼竜山に鶴ノ音は、鶴突張ると見せ耐えるを鶴すかしてすぐ左を差し、下手投げ旨く決まりて鬼の勝。
・成瀬川に小西川は、左四ツにて小西より下手投げを打ちたるも、成残りて寄るを小西すかさず腰投げを打ち、成瀬耐えてすでに同体に流れんとせし時、早くも成は手をつきて小西の勝は興味薄し。
・嶽ノ越に荒鷲は、嶽直ちに左を差し右上手を取るよと見る間に押切って嶽の勝は当然。
・一力に玉風はまず相角力にて、玉右を手ぐって泉川に懸けしも解れて相四ツとなり、すぐに玉より釣り身に行きしも効かず土俵の中央に突立ちヨイショヨイショの掛声ばかりにて水となる、のち少しく揉みしばかりにて引分は無理ならず、観客より動くなの好評さえありし。
・横車に甲は、立ち上りすぐ左四つとなり、甲は横の釣を防ぎしも遂に釣られて横の勝。
・天ツ風に大纒は、天ツ大の左差しを撓めんとせしも大しっかと取りて効かぬより、左四ツと右上手を引かんとするも、振って取らせず遂に大は右上手を引いて打ちたるも残ると見てもたれ込み大の勝は大相撲。
・當り矢に大見崎は、突き合い當は一寸ハタキて左四ツとなり、荒く揉み當より上手投を打ちてまさに大の危うかりしが早くも打ち返し、決まりて同体に流れ団扇は當りに上りしも物言い付きて預りは、双方怪我なく平となる。
・梅ノ谷に若湊は当日の呼び物にて、立ち上がり突きより手四ツとなり若は張り手一番すぐ突きて透きなく梅もすでに危うく見えしが、若の一杯に突き出したるを素早く体をかわせながらに引落し、若の泳ぐを後ろより軽く突きて勝を占めしに、若はその場を去らず残念に見えしは気の毒なりし。
・谷ノ音に逆鉾は、突き合い谷は逆の左を手繰って泉川に行きしも、外れて右四ツより左四ツとなり、谷は寄せて足癖に行かんとすれば逆は突張り体を伸ばして効かせず双方揉み合いて水となり、のち取り疲れて引分は面白味なく、観客冷評を下したり。
・鳳凰に増田川は初めての取組にて、立ち上り鳳は増の左を取り例の泉川にて鳳の勝。
場所も大詰めの八日目となりました。千年川、鬼鹿毛、玉ノ井ら何人か平幕力士が休場しましたが、客入りに大きな影響は無いようです。前日に常陸山戦で奮闘した突っ張りのベテラン若湊は梅ノ谷戦。いい所まで攻めましたが、いなされて惜敗。かなり悔しかったようですが、拍手はたくさんもらえたことでしょう。新関脇の逆鉾はすでに5勝を挙げて勝ち越しを決めていますが、この日は足技の谷ノ音に苦戦して引き分け。河津掛けをこらえてしのぐなど面白そうな相撲に見えますが、少し物足りない内容だったでしょうか。大関鳳凰は得意の力技で5勝目、順当に勝ち越しました。
明治31年夏場所星取表