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レトロ相撲記事。

明治~大正の新聞記事は大変興味深い情報の宝庫です。味わい深い文体も楽しみながら、古き佳き時代の相撲場風情を満喫しましょう。 緑色の文字は作成者のコメントです。

明治14年夏場所2日目 (東京横濱毎日新聞/明治14.5.18)

Posted on 2006年7月2日 By gans 明治14年夏場所2日目 (東京横濱毎日新聞/明治14.5.18) へのコメントはまだありません


・昨十七日、回向院二日目の相撲は見物千五百人にして。
・中入前の小武蔵と宮ヶ崎の立合はついに小武蔵の勝とはなりたれども、余程揉めたる勝負なりし。
・浦風と清見潟の立合は、浦風は利き手の右を差し左にて相手の右の腕を握りて揉み合いしが、浦風の得手なる「ヅブネリ」に清見潟は土俵の中央にて投げられたり。
・関ノ戸に長山は立合申し分なかりしも遂に関ノ戸は相手の両手を持ち、一捻りに長山を引き倒して勝を得たり。
・司天龍に常陸山の立合は余程念入りしが、立ち際常陸山のツッカケに司天龍は今一足にて踏切らんとせしを、手際にも踏止まり遂にツッパリ返して押し切りし時、常陸山は其の手を引きて「ヒッカケ」しが惜しむべし体と体と重なりしゆえ司天龍はのし掛かりて勝ちたり。
・梅ヶ谷と入間川は立合申し分なく手と手にて渡り合い、双方声を合わせて押し合い居たりしが、流石の梅ヶ谷も入間川の「ケタグリ」を恐れてか左右なくは寄り付かざるよう見えしが、入間川はあせりて力を籠め一つ押したる力を借りて梅ヶ谷は「ハタキ」を呉れ入間川を土俵の中央に這わせて勝を得たり。
・中入後、立田野と荒角は念入りて立上りしが、立田野は大喝一声相手の横面を撲り、其のひるむを付け入りて左を差し右にて相手の利き手を受け、其れなり押し切りて勝を得たるは前日といい本日といい実に稀代の働きなり。
・武蔵潟と島田川は、島田川は左を差し右にて相手の左手を受けんとせしかど、あいにく外れて遂に武蔵潟の名代のナタに掛けられ負となりしは是非もなき次第なり。
・手柄山と達ヶ関は、立合際手柄山が左を差さんとしたるを達ヶ関に「ヒッカケ」られ、余程危うく見えしを手柄山は際どく踏み止まりて勝となりしは誠に危うき勝負なりし。
・本日幕下の相撲に藤ノ戸と日下山の立合は実に勇ましく藤ノ戸は立つとすぐさま右手に力を籠めて張り手を呉れ、遂に組付きて勝を得たりしか、この張り手たるや実に機をすかさず相手の鋭気を挫き流石強力の日下山を組止めたるは美事なる働きなりし。
・またこの日の小西川改め司雲龍と荒玉は双方若手の贔屓相撲ゆえ、名乗の揚がるや見物はどよめき渡り勝負如何と固唾を呑んでありしに、司雲龍は立声と共に立上り、荒玉は余程立後れしが遂に其のまま声を合わせたり、司雲龍はすかさず右を差し左手にて相手の右手を殺し、双方矢声を掛けて揉み合いしもついに水となりしが、其の後も司雲龍は撓む色なくクッツキてありしに、荒玉も今は何ともすべき手なく遂に引分となりたるは惜しき勝負にてありし。

昔は立ち合いの時にヤッとか声を出しながら立つのが暗黙のルールのようになっていたようで、立ち声という言葉まで登場します。いつ頃から廃れたのでしょう。昭和の戦前くらいまではこういう立ち声の記述を見た覚えがありますが・・・またこの頃の記事には勝負中に発する声についてもよく描写されていて、力士達の気合が伝わってきます。中には立田野のような荒っぽい相撲も・・・
明治14年夏場所星取表
西前頭2・清見潟又市

大相撲

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