・昨日回向院五日目の相撲は見物三千弐百六拾九人にて上景気なり。
・梅ヶ谷と荒角の勝負は立合い申し分無く梅ヶ谷は下手、荒角は上手なれば荒角は押されてたぢたぢと土俵際に来たりすでに踏み切らんとせしが、一声叫んで荒角は梅ヶ谷の頸に手を掛け「クビナゲ」を呉れしかば、梅ヶ谷ははづみを打ちて土俵の外へ投出されしと思の外、腰を落として頸に掛かりし荒角の手を掬い上げし故、荒角は自分の力にて土俵外へ転げ出でたり。
まだ横綱免許を受ける前ですがすでに無敵の第一人者・初代梅ヶ谷の登場です。この日も首投げの強襲に動じず、冷静にさばいて貫禄勝ち。休場や引分、預りを挟んではいますが本場所での黒星は明治9年1月以来無く、4年以上も土付かずです。しかし当時の横綱は「地位」ではなく、現在のように若い全盛期のうちに横綱となれるわけではありません。梅ヶ谷も綱を締めたのはこれより4年後のことになります。
明治13年夏場所星取表