・昨日、回向院九日目の相撲は見物千六百六十二人なり。
・中入前、藤縄に長山は立合申し分なく藤縄は下へ潜り相手の足を取り、手もなく藤縄の勝となれり。
・千勝森と大纒ははでやかに立合いて最初は刎ね合い、後は手と手にて渡り合い、大纒はしきりに相撲を仕掛け元気盛んに取るものから、名打ての荒相撲千勝森も少し気を呑まれしにや、妙手も出でずただ大事のみ取ると見えし時、水の入り大纒の方に痛みありて引分となれり。
・響矢に千羽ヶ嶽は難なく立合い、千羽ヶ嶽は相手の左右とも引張り込み閂を掛けひたすら捻り倒さんとすれども、響矢は両手にて廻しを取り動かざりしが隙をうかがい左手を抜きて相手の左腕にあてると其のまま押切りて勝となれり。
・梅ヶ谷と若島は梅ヶ谷の勝なりき。
・中入後伊勢ノ濱に若山は、伊勢ノ濱少しく後れて立ちしが、若山はすぐ押し切らんとせしかど、伊勢ノ濱も左右なくは踏切らず土俵に足を掛けて堪えしを、若山は早くも相手の右足を取り、あびせかけて勝ちを得たるは十分の出来なりし。
・勢イに小武蔵は双方立合のやかましき相撲ゆえ、見物はこの相撲こそ容易には立つまじなど言い合いし所、互いに力を入れて立上ると勢イは立ち際相手を「ハジキ」て向こうへ廻り、相手の両脇へ手を差したる時、小武蔵は踏み切ると同時に待てと声掛けたれば、早や行司の団扇は勢イの方に揚がりたるゆえ、勢イは名乗りを受け優々と土俵を下りたるに、小武蔵はいかなる訳にや未だ立たぬ相撲なりとてなお取り直さんとするにぞ、四本柱の年寄の種々説き諭し師匠高砂も立入りて漸く小武蔵をなだめ、土俵より下ろしいよいよ勢イの勝となれり。
・入間川に稲ノ花は難なく立合い、二ツ三ツ刎ね合い稲ノ花は左手を差したるに、入間川はなお右を差されん事を防ぎ居たるに、稲ノ花はうまく右を差し双手の廻しに達するやいな、すぐさま相手を釣り揚げてあびせ掛け勝を得たり。
・手柄山に武蔵潟は引分となれり。
本場所が始まっても、お構いなしに淡々と更新するブログです(笑)大詰めの九日目だというのに何故か観客が激減してしまいました。天気悪かったのでしょうか?しかも大関同士の取組の描写がひどいことに(;・ω・)やはり若島は体調不十分で相撲にならなかったのかも知れません。立ち合いにうるさい力士、言い掛かりもかなりうるさいようで(;・ω・)高砂といえば後年、自分の弟子に有利な物言いをつける事で悪名を馳せましたが、この時はまだ大人しかったようです。
明治14年夏場所星取表